Intermission 2『ブリッジより、整備員へ敵の追撃が、予想される!各機の弾薬補給と、再出撃準備を急げ、繰り返す・・・』オープン回線に艦内放送が繰り返し流れているのが聞こえる。 「お前たち聞いたとおりだ、ってバカヤロー!!そこのMSは無理に着艦させるな!ワイヤーで固定しろ」 整備班長のアキジ・コバヤシの声が艦内放送に被る様にオープン回線に響き渡る。 未だ運用システムが確立されておらず、全てが手探りの状況下でMSの着艦マニュアルなどは当然存在しない。正確にはあるのだが、「改善の余地あり」なものでしかない。 実際、戦艦とMSの相対速度を合わせるのは難しく、まして、戦闘後には様々な問題を抱えていて着艦時の事故は結構多い。 だったら、着艦させずにワイヤーを飛ばして固定してしまえば、少なくても、着艦時の事故は減るはずである。 シフォンは自分の機体とナツカゼの相対速度を合わせると同時に、タイミング好く甲板からワイヤーが絡みつき機体が、固定される。 「すまん、おやっさん・・・また壊した」 シフォンはコックピットの外まで出迎えてくれたアキジ整備班長に、話しかける。 「なに言ってやがる!ジオンのエースパイロットと遣り合って、死なずにこうやって機体を持って帰って来たんだ!」 実際破壊されたMSや航空機からパーツを取り出し再利用し、特に試作機や専用の機体が多いこの部隊では、部品調達が困難なため、使える部品はリサイクルするのは必然であった。 「機体直せるし変えが効くが、おめーは死んでも変えはいないんだからな!」 そう言ってアキジ整備班長が、コックピットハッチを外部からの強制スイッチを押し、肩を叩きながら出迎えてくれた。 実際完敗だった・・・戦艦ハルカゼ、アキカゼともに大破・・・シフォン達の乗艦しているナツカゼも何とか航行できる範囲だが、まともに戦闘できる状態とはとても言えなかった。 その時、通信モニターにミユキ伍長からの通信が入る。 「少尉、お疲れ様です。申し訳ありませんが、至急ブリッジまで上がって来てください」 「了解。それとミユキ・ムラサメ伍長!あとで、話があるから覚えておけ・・・」 送信を返すと、モニター越しにミユキ伍長が、「あっかんべー」をして、モニターを切った。 「あのやろう・・・」 シフォンは軽い怒りを覚えたが、心を抑えてコックピットから出ると近道とばかりに、ノーマルスーツの機能にあるAMBAC(能動的質量移動による自動姿勢制御)システムを使い、外から直接ブリッジに向かった。 「艦長状況は・・・」 シフォンは艦橋の扉が開くと、ヘルメットのバイザーを上げ、ナツカゼの置かれている状況をアフランシ艦長に確認する。 「ひとまず、この空域からの離脱しながら、補給作業を進める・・・」 その間にもオープン回線には機関部の火災が沈下しただの、レスキュー班をデッキに寄越せなどの情報が飛び交っていた。 「好くないな、この程度の被害で済んだのは幸運以外の言葉が見付からない・・・」 「やはり、見逃してくれたと、艦長も・・・」 「それもあるが、サイクロン2・3がジオン艦隊の旗艦を落としてくれた事が大きいな・・・」 左手の拳を口の近くに持っていき、腕組みをしながら考え事をするアフランシだった。 確かに彼らが敵旗艦をあのタイミングで撃沈させてくれなければ、自分もあの「紅いザク」に撃破されていただろう・・・。 「それと、疲れてるところ悪いが、至急MS部隊再編を進めてくれ」 「再編・・・?」 「先の戦闘で生き残ったヨナとウモンを暫定で、お前の小隊に組み込み、その後、交代で艦周辺の警戒シフトを組んでくれ」 3小隊9体のMSがあった艦隊のMSの約半分の4体が、先の戦闘で撃破された事になる。 損耗率の極めて少ない艦隊であっただけに、MS部隊の再編は急務だった。 「暫定と言う事は、やはり」 「あぁハルカゼ、アキカゼ回収作業が終わり次第、一度ルナツーに戻る」 「ルナツーに・・・?」 損害が酷いとはいえ、近くに緊急の補給基地もあるにも関わらず、あえて「ルナツー」に戻るといったアフランシの発言をシフォンは考えた・・・ 「まさか、噂の新造戦艦が出来上がったのか?!」 シフォンの言葉にアフランシは軽くうなずく。 「先ほど報告を兼ねてルナツーに連絡をいれた処、「外見」は出来たらしい、後はソフトを含めた「中身」の問題だけらしいな」 本来シフォン達、特殊戦技教導隊は新造戦艦を含めての実験部隊だったが、戦艦を設計が従来のコンセプトとはまったく違って、完全にMS運用を前提としての新造艦であったのが災いし、今日まで就航できないでいた。その為、暫定でアフランシの艦隊でMSの運用テストを繰り返していたのだった。 「それと、現在ジャブローを発進した連邦軍の艦隊がルナツーにて補給を受けて準備をしている」 「大規模な作戦があるって事か・・・」 宇宙世紀0079年12月2日 この日、南米の連邦軍本部ジャブローより多数の宇宙艦艇が打ち上げられた。 その目的は『星一号作戦』 オデッサ、ジャブローと地上での勝利を重ね、ジオンの地上勢力を壊滅させた連邦軍が制宙権を回復すべく、遂に動き出したのであった。 |